李開復(Kai-Fu-Lee)について:

1961年台湾生まれ。中学の時に米国に移民し米国国籍を取得。アメリカコロンビア大学パソコン学部卒業、アメリカカーネギーメロン大学コンピューター学博士、香港都市大学栄誉博士、アメリカ電気電子工学協会の院士。 1998年に北京市に移住し、アメリカ国籍を捨てて中国国籍だけを残す。2009年9月に北京で創新工場(SINOVATION VENTURES)を創立し、インターネット、モバイルインターネット、クラウド計算などの分野のベンチャー企業立ち上げを支援している。創新工場の創業前はGoogle、Microsoft、Appleなど世界トップのIT企業に就職し、全世界の副総裁を務めた。かつてのグーグル中国オフィスの代表でもある。米国で発行されている「TIME」誌で、2013年に世界で最も影響力のある100人のうちの1人に選ばれた。
■創新工場ウェブサイト: http://www.chuangxin.com

李開復は中国の人工知能(以下、AI)の未来に大きな期待を抱いている。彼はマサチューセッツ工科大学(以下、MIT)での「AIと未来の仕事」会議で演説をした。そこで、「米国では無人運転自動車が15〜20年以内に普及する社会現象が起こることが予想されるが、中国ではそれよりも早い10年でこれを実現できるかもしれない」と語った。この話は最新のAI技術を利用してサービス開発することを熱望している米国大勢の関係者と、この会議の参加者にとって意外に感じる話だろう。

李開復は北米と中国のAIの発展の歴史をよく知っている。李開復は1988年にカーネギーメロン大学(以下、CMU)でAI(音声識別)の博士学位を取得。その後、Apple、SGI、MicrosoftとGoogleに勤務した後、2009年に北京でベンチャーキャピタル「創新工場(SINOVATION VENTURES)」を創立している。

李開復はMITでの演説でこう語った。

AI時代では、米中間で独占競争が発生する局面は避けられません。そして、この未来はもうすでに見え始めています。これはちゃんと根拠のあるお話しです。多くの証拠として、中国はAI領域で世界一なるために猛スピードで技術開発に取り組んでおり、今では過去多くの最先端技術を生み出してきたアメリカをも追い抜く勢いです。今日はこれから、なぜ中国がAI開発の流れをリードしていくことになるのか、6つの視点に絞ってお話しをしましょう。

1)豊富な人材

アメリカ人工知能学会(以下、AAAI)の289人の研究員中、中国人の研究員はわずか2名。
しかし、中国のAI研究員の数は驚くほどのスピードで増え続けている。「100雑誌/会議ベストAI論文」によると、中国のAI研究者の割合は2006年は23.2%で、2015年には42.8%にまで増加している。引用論文の割合は25.5%から55.8%に上昇。

また、Microsoft、Facebook、Google、CMUのチームが立ちはだかる中で、中国の顔認識システムのスタートアップ企業「Face ++(フェイスプラスプラス)」は、ACMチューリング賞(ACM A.M. Turing Award)を受賞している。
また、AAAIが2017年の会合を1週間遅らせたのは、一部のスケジュールが中国の旧正月と被る日があったためで、中国と米国研究者の論文数はほぼ等しいため、AAAIは中国人研究者の学会参加を待っていた。

2)大量のデータ

AI界の先駆者である李開復は、コーネル大学教授のFred Jelinek(フレデリック・ジェリネク)の言葉を引用し、「データがないということは、逆にたくさんのデータが存在することを意味している」と話した。多くのAIアルゴリズムは、これまでかつて無いものを開発してきた。ほとんどのAIアルゴリズムはオープンソースであり、私たちの知る限り、それらを調整するには少数の賢い人が必要だ。 FacebookやGoogleのような企業の成功は、好循環に起因している。
データが増えれば、より優れた製品と高度に訓練されたAIが得られ、そしてユーザー数が増え、より多くの収益を得ることができる。 これにより、より多くの研究者を募り、より多くのシステムを改良、開発して、更に多くのデータを処理をしてたくさんの新しい発見を採掘することが可能になる。

李開復の言ったとおり、米国と中国のデータ格差は両国の人口(若しくはアクティブモバイルユーザー数)の差以上だ。中国人のモバイルでの支払い回数はアメリカ人の50倍、商品の注文数もアメリカの10倍。これらはAIモデル育成するための良い参考データになるだろう。

李開復は続けて強調した。

米国は決済システムの基盤となるクレジットカード発祥の地ですが、中国はモバイルとその使用方法の面で超越しています。中国はモバイル決済を通じてAIを高度発展させるチャンスを持っています。なぜかというとモバイル決済は摩擦がなく、対等でスピード感がある等で多くのメリットがあるため優位性の高い決済方式で、尚且つ決済アプリからは大量のデータが発生するため、これらのデータを活用してAIの各サイクルを構築することに役立てることができるからです。

3)有用なイノベーション

過去に李開復はRobert Buderi(ロバート・バッデリ)とGeorge T. Huang(ジョージ・T・ファン)の2006年の著作「ビル・ゲイツ北京に立つ : 天才科学者たちの最先端テクノロジー競争」の中で学生たちに向けて、「本当に重要なのはイノベーションではなく、有用なイノベーションだ」という言葉を残している。

この言葉はまるで中国の現状を表していると言えるでしょう。
中国が他国の技術をひたすら真似をする時代は終わりです。「コビー」は起業家に製品の作り方を教え、彼らは優秀なプロダクトマネージャーになりました。そして、彼らは速やかに次の段階に入り、アメリカの革新に触発され新しい産品の特性を開発しました。そのため微博(Weibo)はTwitter、淘宝(タオバオ)はeBay、微信(Wechat)はFacebook Messengerよりも機能性が高く、機能性が高いとビジネスモデルが一層強くなる。 
今日、中国企業は大量の新製品とサービスを打ち出していますが、中には米国でも見られていない革新的な製品とサービスが多数登場しています。今では中国のサービスを他国がコピーする時代に突入しているのです。

4)競争の経験

歴史学家のAlfred Chandler(アルフレッド・チャンドラー)はこう述べた。
米国の企業は19世紀に急速に経済が発展し、20世紀に世界規模で成功している。日本企業は小規模で閉鎖的な市場で経験値が不足していたが、技術を磨き製品の競争力つけて20世紀後半に世界市場を征服するまでに成長した。米国では中国企業の規模が過去のどの時期よりも大きくなっているが、国内で競争が存在しない。」

李開復曰く、

中国は迅速なスタートと素早い改善で優位な環境を形成しています。米国と比較して、中国の人々はデータのプライバシーにあまり注意を払わない傾向があり、道徳的な問題についての共同認識はさらに少ない。企業は危険を顧みず、実行することに専念し、独自の目標と会社のビジョン実現に専念する傾向が強いと述べた。このビジョンは往々にして世界的な野望を含んでいます。

5)政府からの大きなサポート

失敗を恐るな!とにかく挑戦せよ!

顔認証技術開発企業の「Face++」は最近、中国において中国国有資本険投資基金(China’s state owned capital venture capital fund)からシリーズCで4.6億ドル(約490億円)の融資を受けた。2016年、中国政府からの資金は3,530億ドル(約37兆円)まで増加している。2015年は1,460億ドル(約15兆円)、2014年は1億2,900万ドル(約13兆円)だった。
今や政府は他のパートナーよりも低い報酬を受け入れるベンチャーキャピタルだ。政府はトライアンドエラーを認めており、失敗にも寛容な姿勢なので、これは中国トップのベンチャー企業にとって大きな励みになっている。彼らは政府から資金を調達できるため、一般的な資金調達ににかける時間を短縮できるので、より速やかにサービス開発に時間を割くことができるのだ。なお、この賢明なやり方はイスラエルとシンガポールの実績から影響を受けている。

最も重要なのは、政府資金は新産業政策の明確なガイダンスに従って動いていることだ。
政府資金のガイダンスとは、

「政府は科学技術を支持し、テストの実践を支持し、スピードを支持する。決して挑戦する彼らを封殺するために資金を使用してはならない。」

という国を挙げてベンチャー企業をサポートする内容だ。
2016年7月、国務院は2020年までに中国はAI技術とその応用領域で最先端に立つ。2030年には世界主要のAI革新センターになると宣布している。
李開復は「失敗を顧みない非常に単純な戦略」である中国政府の新産業政策と、オバマ元大統領が2016年に発表したAI未来戦略の内容を比較すると、米国は「長期的な資源、規制、倫理面が考慮されている合理的な戦略」であると、米中の考え方の違いをコメントした。

李開復によると、

2010年中国は世界高速鉄道のリーダーになると誓いました。その6年後、世界中の60%の高速列車は中国に配備されています。2015年中国政府は「マス・アントレプレナーシップとイノベーション・ムーブメント」計画を発表。それから中国では次々に起業家が誕生しました。現在、中国には8,000人(企業)のインキュベーター/アクセラレータ(2014年は1,700人)がいますが、これらのインキュベーター/アクセラレータを、これまでですでに89,000人(企業)ものスタートアップが卒業しています。

6)ベンチャー精神

思うままに・競争・大胆

中国では消費者や企業に拘わらず、政府も含めて、国全体が大胆な冒険精神を持っている。
李開復は演説で中国の経済がデジタルに変換される未来について「4つの段階」に分けてこう述べた。

【第1段階】
企業はオンラインデータの活用に成功している。
中国3大IT企業のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent社の略)は、米国の同業社よりも優れたパフォーマンスを発揮すると予測。これは彼らがモバイル決済方面で先端に立っているという理由だけではない。彼らには独占禁止法からの制限がないため拡張方面にも強いので、彼らは銀行や保険会社になるだろう。

【第2段階】
企業は商業データソフトの開発と販売を成功させている。
中国企業が米国の企業と異なるのは、中国大手企業でも、重要なコンテンンツを含むデータウェアハウス(DWH)に注意を払っていない点だ。この面に関しては中国は米国よりも遅れをとっているが、政府は中国企業の発展を促進しているため彼らは米国企業を追い越すチャンスがある。

【第3段階】
膨大なデータが集まり、消費者はプライバシーへの関心が高まる。中国では低価格でハードウェアを提供できるため、スマート家電を含むデジタル製品の普及率が急速に高まること予測される。そのため、中国は現実世界のデジタル化方面でアメリカを超えているだろう。

【第4段階】
オート運転自動車やロボットのような全自動化技術の面で、現在米国が技術面で先端に立っているが、中国企業は政府からの支援もあって急速に発展しているから追い越す可能性は十分に秘めている。中国はオートサビス技術開発が米国よりも2年遅れをとっているが、現段階で米国の技術を追い越せる可能性は50%。将来、どちらがオート技術の先端に立っているのか見て見ましょう。
また、Online-Merges-with-Offline (OMO)、デジタル世界と現実世界が融合する未来は、教育を含むその他領域に影響を与える。

最後に李開復はこう発言した。

みなさんが一年後に中国に行ってみたら、ショッピングは全自動或いは半自動の商店で完結しているでしょう。これが現在の中国企業のサービスを展開させるスピード感です。「思うままに・競争・大胆」この3つのベンチャー精神が、中国のAI技術を猛スピードで発展させ、中国を大きく前進させるのです。私の父親は幼かった私にいつも「中国は自国の潜在力に気づいてない」と話していました。今、中国はAIを含めて数多くの領域でリーダーになる可能性を感じています。

・参考記事
https://www.ithome.com/html/it/333283.htm

Turing Award Winner Andrew Yao Joins Chinese Facial Recognition Firm Face++