2017年は無人リテール元年

Amazon(以下、アマゾン)、阿里巴巴(以下、アリババ)、京東(ジンドン)、哇哈哈(ワハハ)などの大手企業が無人リテール市場に参入したと共に、無人リテール(小売)はベンチャー企業にとって新たなビジネスチャンスとなった。
アマゾンが発表した2017年Q4財務報告によると、同社の実店舗経由の収益は45億米ドル(約4,803億円)。このデータからアマゾンのオフラインリテール分野での野心がうかがえる。

2017年のリテール市場を振り返ってみれば、無人リテールは間違いなく一番注目を集めたため、2017年は無人リテールの元年と言えるだろう。
中国では昨年下半期から「無人棚(無人商品棚)」が話題になった。
この無人棚は商品のQRコードをスキャンして決済できるサービスとなっている。無人棚市場には昨年50社以上の企業が参入。しかし、近日、四川省成都の無人棚プロジェクト「GOGO小超」が運営停止になり、同社系列の「GOGO無人コンビニ」も運営停止に至った件を含めて、参入に失敗したスタートアップの企業が多発しているため、この業界の寿命は短いのではないかと懸念され始めている。

無人リテール市場のバブルは、スタートアップ、ベンチャー企業にとって、ビジネスチャンスとなるのだろうか。

■ビッグデータに基づく販売

■無人リテールとは:
店頭スタッフがいない店舗で、消費者は自分で商品を選んでセルフで決済できる小売サービスのことを指す。
店舗への入店、会計、退店までの一連のデータは、指定のアプリから収集し管理されるている。
現在、無人リテールには三つの形式が存在している。

①自動販売機(以下、自販機) ②*無人棚 ③無人コンビニ
*無人棚は、イメージとしてはオフィスグリコのデジタル版に近い。
学校やオフィスなどに商品棚が設置され、利用者は欲しい商品を手に取り、商品についているQRコードをスキャンして(Wechatペイやアリペイ)でモバイル決済される仕組となっている。ただ、このサービスは盗難被害も多く発生しているので利用者の良心に頼るところがあるのが難点。

これら3つの形式の中でも、自販機はすでに形態が成熟しており、無人棚と無人コンビニは2017年に爆発的に急成長。しかし、急成長しているとはいえ、現在はまだ発展の初期段階にいるところだ。

■無人リテールの成長率
iResearchの「2017年中国無人リテール業界研究報告」によると、2017年無人リテール(自販機を含める)の交易規模は200億元(約3,370億円)と予測された。更に、2020年には650億円(約1.1兆円)を突破することが予想されている。年成長率は50%前後と推測。こんなにも大きな可能性を秘めている市場を各企業は見過ごさないだろう。いま、多くの企業がこぞって資金を投入している。メディアの鉛笔道が発表した「2017年無人リテール業界の発展状況と今後の動向」によると、2017年頭から11月3日まで、無人リテール業界の企業は33.7億元(約567億円)資金を調達した。

しかし最近、急成長中の最近無人棚の分野で次々と波瀾が起きているようだ。
業界は整合させる段階に入ったと見られる。
例を挙げると、2017年に5億元(約8億円)資金を調達した無人棚運営会社の「猩便利(xingbianli.com)」は2018年1月10日から無人コンビニを閉鎖。複数の都市で棚を撤去し、従業員のコスト削減などがニュースで取り上げられた。そのほか、多くの企業で協業や合併などの話が相次いでいる。「易果生鲜(yiguo.com)」と「哈米科技(hami.mobi)」は戦略パートナー契約を結び、「猩便利(xingbianli.com)」は「51零食(51snackbar.com)」を買収、「果小美(guoxiaomei.com)」と「番茄便利(fanqiebianli.com)」と合併。

この短期間のうちに業界で様々な出来事が起きているが、無人リテールの将来はどうなるだろうか。

中国科学院大学教授の吕本富(ル・ベンフー)氏は無人リテール業界についてこう述べている。

無人リテールはリテール(小売)の一つの新しい方向です。
そして、アメリカでは無人リテールの発展には人工知能(以下、AI)とビッグデータが必要不可欠と明言しています。ビッグデータを通して消費者の消費習慣を把握し、無人リテールサービスで販売される商品は、消費者から収集したビッグデータに基づいてピックアップされたものを並べたりと、データはマーケティングには欠かせません。ビッグデータがなにもなければ、この無人リテールビジネスは成立しないのです。ビッグデータのない無人スーパーのバブルはすぐに弾けることでしょう。


■大手企業からの買収を狙うベンチャー企業

過去の一年で、無人リテールは多くの支持を得たが、一方で解決すべき課題も多い。
iResearchの分析では、こう語っている。

優秀で業界のお手本となる企業が出てくると、市場の未来は明るいだろう。
しかし、無人リテールは約1年の発展しか経ておらず、まだ初期の模索段階だ。現在、産品技術の最適化や企業規模の発展、企業加盟とサプライチェーンなどの共同課題が数多く存在する。

産品の技術を高めることは、無人店舗の規模を大きく発展させるための必須条件となる。
無人コンビニは従来のコンビニより規模が小さく、商品を在庫できないデメリットがある。そのため、無人とはいえ必然的に店内商品の補充回数が多くなるといった課題があり、この課題を解決するにはサプライチェーンの協力が必要になってくる。業界に詳しい者によると、無人リテール市場は少なくともあと5年以上の開発と改善が必要になり、その後に目に見える成長が現れることが予想される、とコメントしている。
無人リテール市場の発展にはまだまだ多くの時間を必要としているようだ。

吕本富(ル・ベンフー)氏は、無人リテールを運営するにはビッグデータのサポートが必須条件になるほか、他にも解決しないといけない多くの課題があると指摘した。

無人リテールの核心はビッグデータ、他には決済システム、監視システムなどのサポートも必要になります。
サービスの提供と運営には無人ショッピングに関わる数多くの技術のサポートが必要です。それに加えて、従来のコンビニを運営する上で重要視していたお店の立地条件等も合わせて試行錯誤せねばなりません。

無人リテールサービスの開発と運営には多くの資本と技術、整った管理システムが必要になるため、スタートアップ企業が参入できる業界ではない、と語る者が多いが、吕本富(ル・ベンフー)氏はこの考えに賛同していない。

スタートアップ企業と大手企業に大きな差はありません。
スタートアップ企業はほかのルートからデータを入手すれば、無人リテール市場へ参入できます。アマゾンとアリババが無人リテール業界に参入してから、この市場は一躍注目を浴び、人気になりました。スタートアップ企業が無人リテールに参入している目的は、多くの利益が欲しいわけではなく、最終的に大手企業に買収されることを狙っているのです。

無人コンビニの缤果盒子(BingoBox)創業者兼CEOの陳子林(チェン・ズーリン)氏はこう語ったことがある。

スタートアップ企業として、目の前のやるべきことは産品を磨くこと。そして効率を上げてコストを引き下げる。これができれば将来は大手企業と協業できる可能性がでてきます。

■無人リテールの「本質」

無人リテールの発展は始まったばかり。
このサービスの展開にはデータと技術、サプライチェーンの力が必要となるので、無人リテールは従来の小売業態と密接に統合するだろう。科学技術創業革新プラットフォーム「36氪研究院」の分析师、查楠(チャー・ナン)氏によると、将来の無人リテールは従来の有人コンビニと相補的に共存しているという。

本質は「無人」ではなく、全消費過程の「データ把握」

無人リテール業態のフロントエンドは人、物、場所。
バックエンドはAI、ビッグデータ、クラウド等の技術やデータ

無人リテールは完全に従来の有人リテールパターンを取って代わることができない。従来の商業パターンを応用して共存しし、そして進化を遂げていく。

iResearchの分析では、短期的に見た場合の無人リテールサービスの運営ポイントは、技術の強化と市場規模の拡大だ。資金を調達し、フランチャイズ展開も競争が激化するだろう。また、毎日優鮮(テンセント傘下の生鮮食品のデリバリー事業),餓了麽(ele.me.com:飲食のデリバリーアプリ)などの優位性のあるサプライチェーンとの連携もすぐに実現されるだろう。中期的な発展ポイントは、企業の技術的アルゴリズムの強化やサプライチェーンのネットワーク化など、サプライチェーンの改善と経営効率の向上に焦点を当てて商品を厳選し、的確なターゲティングをしてサービスを展開すること。

そして、長期的な企業の運営ポイントは、各工程を細分化した正確な運営体制を整えることと、ユーザー体験の向上、データに基づいてさらに正確なユーザープロフィールを作ることが重要だ。収集したデータに基づいてPB(自社のプライベートブランド)の展開も可能になる。

これらの各段階の運営ポイントは、

技術(テクノロジー)、データ、サプライチェーン

この3つが重要な鍵を握っている。

 


■チャイトピ!編集部 感想

今回の記事では、無人リテールの本質は、無人サービスの提供を目的としているのではなく、「ビッグデータの把握と収集」を目的としている部分が腑に落ちた。これからどんなサービスを打ち出していくにしろ、データを持っている企業が強い。「儲け」ではなく、貴重な「データ」をいかにより多く集められるかで企業が競い合う時代になっている。
あと5年ほどこの無人リテールの市場は研究が必要なようだが、世界のAI技術のトップランナーである中国の企業の研究報告に注目が集まるだろう。


・参考記事
http://www.xinhuanet.com/tech/2018-02/27/c_1122457717.htm