アリババ傘下のフードデリバリーサービス餓了麽(eleme)が新しく生鮮食品デリバリー専用のプラットフォームを構築すると発表した。すでに同サービス内では生鮮食品のコンテンツが広く使われ始めているが、さらにその事業を拡大し、生鮮食品事業に注力していく姿勢を示した。今後、全国500都市まで拡大する予定であるとも表明している。

餓了麽との違いを見せる「美団買菜」

餓了麽最大のライバルである美団(meituan)は今年1月、今回の餓了麽による発表より前に、新たな生鮮食品ECアプリ「美団買菜」をリリースし、上海で試験運営を開始した。餓了麽が提供する生鮮食品サービスの現状はプラットフォームと配達設備の提供のみで、自社運営の店舗は持っていない。一方、美団もフードデリバリーアプリ「美団外売」ではすでに餓了麽と同様の生鮮食品サービスを行っているが、新サービス「美団買菜」では、他企業の出店を募るのではなく自社販売を行っている。各地にオフラインの事業所を設置し、事業所から1.5㎞圏内の住民には最速30分で配達が完了する予定である。同事業所は倉庫として機能するだけでなく、仕分けや配達能力も持ち、商品は最寄りの事業所から自宅まで配達される流れだ。

▲美団買菜のアプリ画面

上海での試験運営を始めて2ヶ月、美団買菜は北京でも試験運営を始めた。現在は野菜や飲料、海産物に加えてキッチン用品など合計10品目を取り扱っている。美団は餓了麽と同様にフードデリバリーで培った配達能力を活用し、独自の生鮮食品ECサービスを開始した。ただ、美団自体による生鮮食品ECへの進出は、すでに美団外売に出店している生鮮食品の小売企業にダメージを与えるのではとも指摘されている。

先述の通り、美団と餓了麽は以前から生鮮食品サービスを展開しており、フードデリバリーアプリの中に野菜や果物の配達サービスコンテンツも盛り込んでいた。今回両社は新たに目標を生鮮食品市場へ絞り、本格的に市場へ参入する姿勢を示した。

中国生鮮食品EC市場の発展経緯

これまで生鮮食品を購入する際、大きさや色、新鮮度などは自分の目で確かめたい消費者が多いため、ECよりも実店舗販売が圧倒的な力を持ってきた。EC業界において生鮮食品は未開の地であり、多くのEC企業が未開拓市場でのビジネスチャンスを狙い始めている。関係データによると、2018年の中国生鮮食品EC市場規模は1254億元(約2兆846億円)と、前年と比べ38.8%増加した。2019年の市場規模は1620億元(約2兆6931億円)にまで成長すると予測されている。

▲2016~2021年の中国生鮮食品EC市場規模と予測(出典:iMedia Research)

中国では2012年前後に生鮮ECブランドが相次いで現れ、代表格としてはテンセントが出資した「毎日優鮮」が挙げられる。大手企業による進出は生鮮EC業界を過熱させ、多くの投資が寄せられた。しかしその後淘汰される企業も少なくなく、2010年から2015年にかけては14社の生鮮EC企業が倒産に追い込まれた。その原因の1つとして挙げられるのが、コストの高さである。生鮮食品ECにとって最大の課題は冷蔵配送であり、運送中はかなり厳格な温度コントロールが求められる。この高い配送コストから多くの赤字が生まれるため、生鮮EC企業が黒字を出すのは極めて難しい。

2016年にはEC大手のアリババが「ニューリテール戦略」を打ち出し、その代表的な店として「盒馬鮮生」が登場した。オフラインである実店舗でも顧客を積極的にアリペイや盒馬アプリなどのオンラインへ誘い込み、実店舗から直接生鮮食品の配達サービスを提供するなど、まさにニューリテール戦略を具現化した食品スーパーである。「スーパー+レストラン」という斬新な運営方法でも注目を集め、多くの企業が盒馬鮮生に学んだ。テンセントも盒馬鮮生の対抗馬としてスーパーチェーンの永輝超市に投資し、O2O生鮮スーパー「超級物種」を開業している。

消費者の日々高まる需要に応じるべく、生鮮食品を取り扱う店は実店舗からオンライン店舗へ転換し、その後オフラインとオンラインを融合させるO2O店舗へと進化していった。今回のデリバリー大手の美団と餓了麽による新規事業が、未だ確立されたビジネスモデルの構築されていない“未開の地”である生鮮食品EC市場の成長を、どのように導いていくのか目が離せない。